研究概要 |
最近の生体への遺伝子導入法の急激な進歩から、骨格筋の機能維持のための1つの可能性として、筋肉への遺伝子導入による筋肉細胞の機能保持、さらには機能強化が考えられる。私は以前、発現プラスミドDNAを筋注後、その部位に電気パルスをかけることによりマウスの筋肉へ高効率にプラスミドDNAを導入し、発現させることができることを見出している。この方法は、従来の筋肉への単純な注射による方法に比べ、数百倍の導入効率を得ている。本研究の目的は、この手法を用いて、筋肉細胞の増殖に有効なIGF-1(insulin-like growth factor 1)、血管新生を起こすVEGF(vascular endothelial growth factor)、GH(growth hormone)をラットの筋肉内で発現させ、筋肉の増大、機能強化の効果を検討し、さらに、in vivo EP法による遺伝子導入の効率をさらに高めるために、DNA濃度、溶液、電極の構造、電気パルスの条件(電圧、時間、回数など)の最適な条件を決定することにある。これらの遺伝子のcDNAをPCRによりクローニングし、pCAGGSベクターに組み込み、それらを培養細胞に導入することにより、培養上清中にこれらの蛋白が大量に分泌されることを確認した。これらのプラスミドをマウスの下肢筋肉にin vivo EP法により導入後、血清中の蛋白量のELISAによる測定を準備中である。この成果に基づき、他の成長因子(growth hormone angiopoietin-1,-2など)の発現プラスミドの同時投与の効果も検討する。本研究の成果に基づき、老齢化による骨格筋の衰えを防ぐ手段が確立できれば、国民の健康の維持、増進に大きな展望が開けるものと期待される。
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