研究課題
鶏卵は、小児期に発症頻度の高い食物アレルギーの主要なアレルゲン食品として頻繁に検出されるものである。これまでの鶏卵のアレルゲン性に関する研究から、鶏卵のアレルゲン活性は卵白に強く、卵黄にはほとんどないとされている。しかし、卵黄のアレルゲン性については、それほど多くの学術的知見はなく、卵黄のアレルゲン性の低い要因として卵黄に含まれている多量の脂質に関係があると推測されているにすぎない。ところで、生体には経口的に摂取した食品成分に対しては、免疫反応を抑制しようとする経口免疫寛容機構が腸管組織に備わっている。食物アレルギーの発症は、この食品に対する経口免疫寛容機構がうまく働いていないために引き起こされているとも理解されている。そこで本年度の研究では、通常の栄養状態で、卵黄乾燥粉末(EY)または卵黄からアセトンで脂質を除去した卵黄アセトン粉末(EA)をマウスに経口投与することにより誘導される卵黄タンパク質に対する経口免疫寛容に違いがあるかどうかを検討した。その結果、脂質を含んだEYと卵黄から脂質を除去したEAは、共に卵黄タンパク質に対する経口免疫寛容を強く誘導し、血清総IgE量および卵黄タンパク質に対する特異的抗体価は低く抑えられた。また、EYを経口投与したものは、脂質を除去したEAを経口投与したものよりも血清総IgE量および卵黄タンパク質に対する特異的抗体価がやや低かった。以上のことから、これまで卵黄のアレルゲン性の低い要因として卵黄に含まれている多量の脂質に関係があるとした考えは、今回の通常の栄養状態における経口免疫寛容の実験をみるかぎり、主要な要因と確定するには至らないと思われた。
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