肝門脈レプチンセンサーの食行動およびエネルギー代謝調節における意義を明らかにするためレプチン門脈内投与による、食行動変化、肝臓内脂肪代謝、褐色脂肪組織(BAT)交感神経活動変化を解析した。またレプチンと同様にエネルギー代謝を調節する脂肪組織由来物質として新規に発見されたアデイポネクチンについても末梢投与による影響を調べ、レプチンのそれと比較検討した。1.肝門脈内レプチン投与による食行動変化:肝門脈へのレプチン1000μg/rat末梢投与で認められた自由摂食条件下での24時間摂食量の減少は、100μg/ratおよび10μg/ratの少量投与では認められなかった。すなわち通常量投与時の反応は肝門脈系に特異的ではなく全身性に視床下部に運ばれたレプチンによって生じていることが示唆された。2.肝門脈内レプチン投与による肝臓内脂肪代謝:肝門脈内レプチン投与により肥満動物モデルの肝臓内中性脂肪含量が減少した。脂肪合成系系の転写因子であるsterol regulatory element binding protein 1cの発現が低下しており、それのともなってその下流に存在する脂肪酸代謝酵素のmRNA発現が低下していた。3.肝門脈内レプチン投与によるBATエネルギー消費系の応答:肝門脈内レプチン投与(1000μg/rat)によりBATに分枝する交感神経活動が増加した。しかしレプチン100μg/rat投与時に活動増加傾向が認められたものの有意差はなく、より少量のレプチン投与でも反応がなかった。4.神経ヒスタミンの脳内神経ネットワーク:ヒスタミンの脳室内投与により視床下部では室傍核および弓状核に強いc-fosの発現が認められた。視床下部外では海馬および扁桃体にc-fosの発現が認められた。レプチンの下流でエネルギー代謝を調節する神経ヒスタミンの脳内作用部位が明らかになった。4.アディポネクチンの末梢性エネルギー代謝調節作用:アディポネクチンの末梢投与により肥満動物モデルの体重増加抑制と内臓脂肪の減少が認められた。またBAT交感神経活動促進作用がレプチンと同様に認められた。一方、摂食行動には変化がなかった。これらの作用はアディポネクチンの中枢投与では観察されなかった。以上より肝門脈レプチンセンサーは肝臓内脂肪代謝脚節に関与していること、またアディポネクチンが末梢エネルギー代謝調節作用を有し、肝門脈センサーを介して作用を発現する可能性が示唆された。
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