研究概要 |
大豆ゲニステイン(Gen)と甲殻類由来の食物繊維キトサンについて、閉経女性のカルシウム(Ca)及び骨代謝に与える特異的作用の実態とその機序を明らかにする目的で、卵巣摘出(OVX)雌ラットを用いた投与実験を行った。また、単独では限定的なGenの骨量減少抑制作用を補完するのに適した運動様式を探るたの実験も行った。今期に得られた実験結果の概要は以下の通りである。1.Genの骨量減少抑制効果:低Ca(0,1%)または標準Ca食(0.5%)で飼育したラットにOVX4週後から4週間にわたりGenを5mg/日投与したところ、OVXに伴う大腿骨の骨密度低下を有意に抑制したが、椎骨の骨量減少に対しては効果を示さなかった。Genの効果は、骨代謝マーカーの推移から骨吸収を抑制することにより発現することが裏付けられた。2.持久(E)運動とレジスタンス(R)運動の骨量減少抑制効果:OVXラットに40分間走行させるE運動、ないしは後背部に鉛板を装着して1分間ずつ走行と休息を繰り返すR運動を週5回、4週間負荷した。非運動OVXラットに比べR運動ラットの骨密度は、大腿骨、椎骨ともに有意に高くなったが、E運動ラットでは椎骨に対する作用が認められなかった。この結果、Genの作用を強化するために併用する運動は、R運動がより適していることが確認された。R運動によるOVX後の骨量減少抑制は、骨代謝マーカーの変動から骨形成の増加ではなく、骨吸収の低下によることが示された。3.キトサンの骨量減少促進作用:キトサンを10%添加した低Ca食でOVXラットを40日間飼育した結果、大腿骨と椎骨の骨密度がセルロース投与の対照ラットに比べて有意に減少した。キトサンは、出納試験の成績から尿中へのCa排泄を高め、その体内保留量を低下させることが示された。キトサンによる骨量減少は、血漿骨形成マーカーの著しい低下から主として骨形成の障害によることが判明した。
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