研究課題
基盤研究(C)
ヒトの一般体表面では発汗活動に伴って皮膚血管拡張反応が見られる。その機序を検討するため、ヒト前腕皮膚にニコチンやアセチルコリンを局所投与し軸索反射性発汗を誘発した際の発汗量と皮膚血流量の増加はよく平衡推移し、軸索反射性発汗においても発汗活動に伴う皮膚血管拡張反応が生じる事が明らかとなった。アトロピンの前投与により発汗は抑制されたが、皮膚血管拡張は影響を受けなかった事より、ムスカリン作用以外の機序の関与が示唆された。ネコ足底においてもヒトの発汗と同様に、発汗と同時に皮膚血管拡張反応が見られ、動物モデルとしての有用性が示された。ヒト発汗の伝達物質であるアセチルコリンが内皮細胞に働き、NO分泌を促し、血管拡張を起こすことは知られており、NOが発汗に何らかの形で関与することはまず間違いないと予想される。血管拡張作用を有するVIP、CGRP、ANPなどが汗腺周囲に存在することが知られており、これらのペプチドを介してNOが発汗を修飾することも考えられる。発汗調節と皮膚血流調節のNOを介した新たなリンクが明らかになると期待される。QSARTを用いた2つの応用研究からも熱帯地住民の示す長期暑熱順化の少なくとも一部は熱帯暑熱環境に持続的に暴露されることにより後天的に獲得されたものであること、男性は汗腺1個あたりの発汗能が大きく、かっ前腕の活動汗腺数も多いことにより暑熱下での熱放散に重要な前腕からの温熱性発汗(蒸発製熱放散)が女性よりも大きいことなどの興味深い知見が得られた。これらの研究手法を総合的に応用して、ヒトの主たる熱放散反応である「能動的皮膚血管拡張反応」と「発汗反応」の相互連関についての研究を進めて行きたい。
すべて その他
すべて 文献書誌 (17件)