飲水行動に伴う血圧上昇反応が観察されるが、その機序についての詳細は不明である。昇圧反応を引き起こしうる因子として、飲水にともなう口腔-咽頭領域からの感覚入力、呼吸、嚥下に関する因子あるいは食道や胃の拡張刺激などが考えられる。そこで今回の研究では健康成人男性被験者を用い500mlの水を2分間で飲むあるいは胃チューブを介し経胃的に同量の水を注入し血圧、心拍数、筋交感神経活動(MSNA)の変化を測定し、また飲水に伴う血液量の変化も血液密度を用いて測定した。さらに飲む水の温度を変えたときの血圧、心拍、皮膚血流への影響も検討した。結果として、1)500mlの飲水により血液密度は一過性に上昇したが(血液量は減少)、そのレベルは11の飲水に比べ明らかに小さいものであった、2)経口飲水負荷により血液量の減少に先行して平均血圧、心拍数はいずれも有意に上昇したが、直接胃内への水負荷では有意な変化は観察されなかった、3)飲水負荷によりMSNAは減少したが、直接胃内への水負荷では有意な変化は観察されなをった、4)いずれの水温でも飲水にともない有意な血圧上昇および心拍数増加反応が観察されたが、血圧の上昇の程度は水温に依存し、37℃で最低、5℃で最大の上昇反応が認められたのに対し、心拍数の反応については温度依存性の傾向は観察されなかった。前腕および下腿の皮膚血流の変化については温度依存性の傾向が認められ、特に5℃で減少、50℃で顕著な増加反応が認められた。以上より、500mlの飲水に伴い血圧上昇反応が先行し、これによりと一過性の血液量減少が惹起されること、飲水に伴う血圧上昇には少なくとも胃の拡張刺激を含めた胃の因子は関与しないこと、また飲水にともなう昇圧の程度は水温に依存すること、この際観察される皮膚血流の変化も水温依存性の傾向が認められることが明らかにされた。
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