研究概要 |
コレシストキニン(CCK)にはA, B二種の受容体があり、様々な組織に混在し、各々の役割を果たしている。本研究はこの二種の受容体の各々の役割分担を解明することを目的にAおよびB CCK受容体遺伝子ノックアウトマウス(KOマウス)を用いて検討を開始した。 1.胃の組織学的検討と胃酸分泌能 マウスにおいては胃粘膜はCCK-A受容体KOマウスに比しB受容体KOマウスが薄かった。 胃酸分泌は基礎分泌においてCCK-BおよびABダブル受容体KOマウスが野生型に比し有意の低下が見られた。ヒスタミン刺激にしてはいずれも分泌が亢進していたが、高濃度ヒスタミン投与ではすべての受容体KOマウスでは野生型に比し増加率は有意に低下した。また、ペンタガストリン刺激ではラットのような著しい分泌亢進は見られず、野生型との差は認められなかった。 2.胃排出速度におけるCCK-A, B受容体の機能分担 フェノールレッドの経口投与による胃排出速度を測定した。CCK-8S(CCK-A受容体リガンド)の皮下注射により、野生型とB受容体KOマウスで、排出速度の遅延が認められた。またアトロピンではすべてのグループが濃度依存的に排出速度が抑制された。 3.膵外分泌、胆嚢収縮機能 CCK-B受容体KOマウスでは、膵外分泌調節には全く変化がみとめられなかったので、CCK-A受容体KOマウスを中心に行った。麻酔下に膵液胆汁の混和液を採取し、CCK-8S,アセチルコリン刺激に対する膵外分泌、胆嚢収縮反応を測定した。CCK-8S,投与で野生型ではアミラーゼ、胆汁酸とも排泄量は増加したがKOマウスでは全く反応しなかった。 4.胆石形成 通常飼料においてもCCK-A受容体KOマウスは加齢に伴い胆石形成が増加したが、蛋白と脂肪含有がわずかに高い繁殖飼料では摂取期間が長い程胆石形成が増加した。 5.中枢神経系におけるCCK-A、B受容体の機能分担 高架プラスメイズによる観察ではCCK-B受容体KOマウスの不安関連行動が増加していた。また、CCK-B受容体KOマウスは摂食量、代謝量が増加しており、エネルギー代謝回転が亢進していた。
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