研究課題/領域番号 |
13670080
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中谷 晴昭 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (60113594)
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研究分担者 |
佐藤 俊明 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (60244159)
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キーワード | ATP感受性K^+チャネル / 細胞膜 / ミトコンドリア / 虚血・再灌流 / ischemic preconditioning / 活動電位 / Kir6.2 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
心筋に短時間の虚血負荷を与えた際その後の心筋梗塞巣が減少する"ischemic preconditioning(IPC)"という現象がある。この現象に細胞膜ATP感受性K^+(SarcK_<ATP>)チャネルが重要か、あるいはミトコンドリアに存在するATP感受性K^+(MitoK_<ATP>)チャネルが重要かを明らかにするために、Kir6.2欠損(KO)マウスを用い実験を行い、以下の実験成績を得た。 (1)In vivoの実験において野生型マウスではIPCが認められたが、KOマウスでは消失していた。 (2)KOマウスの心室筋細胞では野生型細胞と異なり、代謝阻害時にSarcK_<ATP>チャネルは活性化せず、活動電位幅は短縮しなかった。 (3)野生型およびKOマウスから単離した心室筋細胞においてフラボプロテインの自家蛍光を測定した所、どちらの心室筋細胞においてもdiazoxideで酸化反応がおき、それは5-hydroxydecanoate(5HD)で抑制され、MitoK_<ATP>チャネル機能が保たれていた。 (4)野生型およびKOマウスの摘出灌流心において左室内圧を測定しながら虚血・再灌流を行い左室機能を評価した。KOマウス心では野生型に比し、左室拡張期圧の上昇が高度であり、再灌流時の左室機能の回復は悪かった。 (5)摘出野生型心でSarcK_<ATP>チャネルの特異的遮断薬であるHMR1098を灌流するとKOマウス心と同様に再灌流時の心機能が悪くなった。しかしながらMitoK_<ATP>チャネル遮断薬である5HDの存在下では若干虚血時に左室拡張期圧が高度となるのみで、再灌流時左室機能は悪化しなかった。MitK_<ATP>チャネル開口薬とされるdiazoxideは野生型心で虚血再灌流後の心機能回復効果を示したが、その作用は5HDで拮抗されず、HMR1098の併用で消失した。 この様にマウスにおいてはIPCの成立や虚血再灌流時の心機能保持にKir6.2をポア成分とする細胞膜K_<ATP>チャネルが重要な役割を果たす事が明らかとなった。
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