研究概要 |
生体内のいたるところに存在するプリン体のうち、最も豊富に含まれているアデノシンの心臓作用は冠血管拡張作用が最もよく知られているが、今回は心機能(歩調取り収縮力)に及ぼす作用に焦点を絞った。今回の研究では従来のアデノシン単独投与による作用を観察するのではなく、持続的投与によって得られるアデノシンの作用を心機能に及ぼす反応として捕らえ,各種自律神経伝達物質のみならずアデノシン単独適用により得られる作用にどう影響を及ぼすのかを薬理学的に分析したものである。 まず、アデノシンの摘出右心房洞結節動脈への持続投与は陰性変時および陰性変力作用を惹起したが、陰性変力作用のみが徐々に回復することを確認できた。このことがどのような生理的意義を有するのかは今後の問題である。 アデノシンの持続投与によりノルアドレナリンの作用は軽度ながら抑制された。一方、アセチルコリンの作用は明確に有意に増強されることを確認できた。また、心臓内自律神経刺激によって生ずる内因性のアセチルコリンおよびノルアドレナリンに対するアデノシン持続注入の作用は同様に増強と抑制効果が確認された。このことは心臓機能のコントロールにアデノシンが関与している可能性を強く示したものといえよう。さらに、アデノシンの持続注入により単独のアデノシンの作用が明瞭に抑制されることを確認できた。このことは活性物質であるアデノシンの急性脱感作反応の存在を示している。この脱感作の惹起されるメカニズムの解明は今後の大きなテーマと思われる。
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