我々は、pituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP)がイヌにおいて、心房細動を誘発することを報告し、PACAP誘発性の心房細動が、心房筋心外膜側の有効不応期の空間的不均一性の増大を伴わず有効不応期の短縮のみで発生することを、報告した。本研究では、光学マッピング法を用い、イヌ右心房筋心外膜側及び心内膜側の活動電位幅(APD)の三次元的不均一性と心房細動発生との関係についてPACAP及びアセチルコリン投与時に検討した。 PACAP(1 nmol)及びアセチルコリン(3-30 μM)投与時共に、基本刺激(S1S1=300 ms)時のAPDの短縮が認められたが、三次元的不均一性についてはこれを証明する結果は得られなかった。つまり右心房筋自由壁の光学データ測定範囲(2X2 cm)内の各測定点で、心外膜側と心内膜側のAPDに有意な差を認めなかった。また心外膜側と心内膜側の80%再分極時間の等時線マッピングの結果においても、PACAP及びアセチルコリン投与時共に、投与前と比較して有意な差を認めなかった。このことは、PACAP投与及びアセチルコリン投与によってAPDの短縮はあるが、その空間的不均一性の増大を伴わないことを証明している。 Programmed stimulation法による心房細動誘発時の等時線マッピングでは、PACAP及びアセチルコリン投与時共に、右心房筋自由壁の光学データ測定範囲で明らかな伝導ブロックは認められず、Focal pattern activityにより心房細動が発生している可能性を示唆する結果を得た。これらの結果は、PACAP及びアセチルコリンによる心房細動発生に、APDの三次元的不均一性の増大というよりも心房筋自由壁の複雑な三次元構造のような他の器質が関与している可能性を示唆している。
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