研究課題/領域番号 |
13670090
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山下 康子 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (80291532)
|
研究分担者 |
山下 樹三裕 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (50192399)
丹羽 正美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20136641)
|
キーワード | 虚血性神経細胞死 / アストロサイト / ミクログリア / SHRSP / MCP-1 |
研究概要 |
われわれは脳卒中、特に虚血性脳神経細胞障害の機構を解明し、治療薬を開発することを目的としている。脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)は若年期より著明な高血圧を発症し、10分間の総頚動脈結紮により海馬CA1領域に遅発性の神経細胞死を誘発する。正常血圧のWKY系ラットではこのような現象はみられない。昨年度の実績報で明らかにしたように、SHRSPに一過性前脳虚血負荷後2日目の海馬CA1領域のアストロサイトにmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)が著明に発現する。そこでWKYおよびSHRSPからアストロサイトを分離・培養し、in vitroで低酸素・無グルコース下でincubationした後、通常酸素・メディウムに戻して48時間incubationした。RT-PCR法でMCP-1の発現を調べたところ、SHRSPでは著明な発現がみられたが、WKYではわずかな発現であった。また、一過性虚血を負荷したあとの細胞障害性を比較するために、LDHの測定およびMTT assayを行ったところ、SHRSPのアストロサイトではWKYに比べより障害性が高いことがわかった。アストロサイトはBBBの構成に重要な役割を果たすことが知られており、SHRSPではBBBの破綻も示唆される。これらの結果から、SHRSPのアストロサイトは一過性虚血負荷により、WKYに比較してより高い障害性を受ける一方、自分自身でMCP-1を発現することが明らかになった。また、培養ミクログリアについても障害性を検討したが、両系における差はみられなかった。SHRSPミクログリアにMCP-1を添加したところ、iNOSの発現がわずかながら増加した。MCP-1は単球の遊走化因子であるとともに、ミクログリアの活性化因子としても作用することが考えられ、アストロサイトが発現するMCP-1がミクログリアのiNOSの発現を促進し、神経細胞障害の誘発に関与することが推察される。今回の結果から、アストロサイトとミクログリアの相互作用の一端が明らかになり、SHRSPにおいては虚血に対するアストロサイト自身の障害性の高さおよびMCP-1の発現という反応が虚血性神経細胞障害にっながることが示唆された。
|