研究概要 |
本年度は、各種抗炎症薬のアポトーシスに対する影響の検討、およびアポトーシスに影響するメディエーターの検索を行った。 1)各種抗炎症薬のアポトーシスに対する影響の検討:検討した薬物は、デキサメタゾン(3mg/kgx2,i.p.)、アスピリン(100mg/kgx2,p.o.)、ニメスリド(3mg/kgx5,p.o.)である。各薬物は、炎症惹起後24時間後から投与を開始し、72時間後に放血致死させ、細胞を採取し、TUNEL法を用いて評価した。デキサメタゾンは滲出液中の単核球数を有意に減少させた。好中球がアポトーシスに陥ると単核球に貧食され、TUNEL陽性の小体として単核球の細胞質中に検出された。TUNEL陽性の小体を持つ単核球の数を計数し、薬物のアポトーシスに対する影響を評価すると、デキサメタゾンは、TUNEL陽性の小体を持つ単核球の数を有意に減少させた。但し、デキサメタゾンは単核球数そのものを減少させたので、この結果から直ちにアポトーシス抑制とは結論出来ない。他の薬物は白血球数およびTUNEL陽性の小体を持つ単核球の数に影響を及ぼさなかった。 2)アポトーシスに影響するメディエーターの検索:誘導型一酸化窒素(iNOS)由来の一酸化窒素(NO)のアポトーシスへの関与の可能性について検討した。滲出液中の好中球および単核球にほぼ同等にiNOSがWestern blotting法により検出された。iNOS発現レベルは炎症惹起9時間後にピークとなった。この時間経過に一致して滲出液中のNOレベルが上昇した(還元Griess法で測定)。炎症惹起5時間後には、滲出液中の好中球にDNA ladder paternが観察された。そこで、このladder paternに対する特異的iNOS阻害薬であるアミノグアニジン(AG,200mg/kg, s.c.)の効果を検討した。その結果、AGは滲出液中のNOレベルを有意に低下させたが、好中球のDNA ladder paternには明らかな影響を及ぼすことはなかった。
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