近年、多くの種類の細胞において、ストア依存性Ca^<2+>流入(SOC)経路やリガンド活性化型のCa^<2+>流入経路が見いだされ、それが細胞内Ca^<2+>調節に重要な働きをしていることがわかってきた。一方、横紋筋では、膜電位依存性Ca^<2+>チャネル(VDCC)が大量に存在する為、VDCCがCa^<2+>流入の主体であろうと考えられてきたが、我々は骨格筋にもSOCが存在し、その寄与はVDCCに比べてずっと大きいことを見いだした。また心筋細胞にも膜電位依存性Ca^<2+>チャネル以外に流入経路があり、低温保存時などのCa^<2+>オーバーロードにも関与する可能性が示された。そこで我々は心筋におけるVDCC以外のCa^<2+>流入経路について、共焦点顕微鏡やエバネッセント顕微鏡を用いた光学的測定と、Rapid Cooling Contracture(RCC)法による筋小胞体Ca^<2+>含量測定から検討した。ラットおよびモルモット心筋を材料として調べたところ、この流入には強い温度依存性が見られた。次に種々のCa^<2+>流入経路の阻害剤の効果を調べた。nifedipineやKB-R7943ではこの流入は抑制されなかったので、L型Ca^<2+>チャネルやNa^<+>/Ca^<2+>交換反応の逆回転によるものではないと考えられた。またSOC阻害剤することが知られている2-aminoethoxydiphenyl borate(2-APB)はあまり効果がなかったが、TRPV5を阻害すると報告されているeconazoleで部分的に抑制された。RT-PCRを用いた検討より一部はTRPV6である可能性が考えられた。一方骨格筋では、2-APBが強力な抑制を示したのに対し、econazoleは効果が弱かったので、骨格筋と心筋の非電位依存性のCa^<2+>流入経路の実体は異なっていると考えられた。今後はさらに流入部位と経路の特定を進めていきたいと考えている。
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