研究概要 |
本研究は、骨格筋細胞の筋小胞体(SR)膜に存在するRyRと細胞形質膜(T管膜)に存在するDHPRとの間で交わされる両方向性連絡の特性とその分子機構の解明を目的として遂行された。 1)細胞形質膜DHPRからSR膜のRyRへの順行性連絡:Sa^<2+>誘発性Ca^<2+>遊離(CICR)の促進剤であるカフェインの投与により持続的にCa^<2+>放出を起こしている時に、電圧固定法により膜を持続的に脱分極すると、引き続く再分極によりCa^<2+>放出が全面的に停止する(RISC ; PNAS 91,5725,1994)脱分極パルス直後に初めてカフェインを投与してもCICRが起こらないことから、再分極時に確かにCICRが抑制されていることが示唆された。この抑制はDHPR欠損筋細胞(RyRは発現している)では観られず、DHPRを遺伝子導入で発現させると再現されたため、DHPRを介した効果であることが示された。また、同様の抑制は脱分極パルスの代わりにフィールド刺激により活動電位を高頻度に発生させた場合にも観られ、生理的条件下でも起こりうることが示された。一方、脱分極によるCa^<2+>放出はこの種の抑制を受けず、CICRと異なる機構で起こることが示唆された。我々がこれまで実験に用いてきた筋管細胞とその細胞骨格を破壊したmyoballの両者を電顕で調べたところ、興奮収縮連関に必須であるT管膜とSR膜との近接構造は保持されており、成熟筋細胞と本質的な差はないと結論された。 2)SRから細胞形質膜への逆行性連絡:培養ラット骨格筋細胞において、SRのCa^<2+>取り込みを抑制しつつカフェインでCa^<2+>を放出させると、細胞外からのCa^<2+>流入と思われる細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が観られた。また、DHPRを介さずに静止膜電位で活性化される新しいCa^<2+>流入系を検出した。これらがRvRを介した容量件Ca^<2+>流入であるかどうか現在検討中である。
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