研究概要 |
構成型熱ショックタンパク質70(HSC70)は、分子シャペロンとしてペプチドのフォールディング、種々のストレスによって変性したタンパク質の品質管理、タンパク質の細胞内輸送に関わることによって、細胞機能の調節に重要な働きを持つ。我々は、最近ヒトHSC70新規アイソフォーム、HSC54を単離し、その発現、シャペロン活性阻害作用(in vitro)などについて明らかにした(Tsukahara et al., Mol. Pharmacol. 58,1257-1263,2000)。さらにHSC54-green fluorescent protein(GFP)融合タンパク質を細胞内で発現させその局在を観察した結果、HSC54は、HSC70とは異なり、主として細胞質のみに局在し、また熱ストレス後の核内移行も認められなかった。従って、HSC54は核内移行に必要な領域を持たないか、あるいは核外移行配列を持つことが示唆された。そこで本研究では、多数のGFP-HSC70deletion mutant融合蛋白質を作製し、その細胞内局在を検討した。その結果、HSC70の核内移行に必要な領域と核外移行シグナル(NES)のコンセンサス配列に相同性の高い配列を単離した。また、HSC54は、NES受容体CRM1の阻害薬であるleptomycinB存在下では、核内にも局在することを明らかにした。以上の結果から、HSC54は、CRM1と相互作用して核外に移行するNESを持つが、核内移行に必要なタンパク質と相互作用する領域を欠くことから、細胞質のみに局在し、核内へ移行できないことが示唆された。
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