1.正常ラットの気管支平滑筋においてACh刺激により収縮が起きるが、この時低分子量Gタンパク質RhoAが細胞膜に移行すること、すなわち活性化されることが判明した。また抗原誘発気道過敏性ラットではACh収縮が増強して発現するが、RhoAの細胞膜への移行量が正常ラットのそれより著しく増大していた。このことはRhoAの活性化の増強がアレルギー時に発現し、気管支収縮性を亢進していることを示唆する。 2.気道過敏性ラットのACh誘発気管支収縮の増大は正常ラットのそれと異なり、百日咳毒素(PTX)によって有意に抑制された。このことはこの増大反応にG_iタンパク質が関与していることを示唆している。Western blotによって気道過敏性ラット気管支ではG_<i3>タンパク質レベルが増大していることが明らかになった。このことはG_qタンパク質ばかりでなく、G_iタンパク質も気道過敏性に関与していることを示唆している。 3.β-Escinにて膜透過性にしたラット肺内気管支平滑筋では一定Ca^<2+>濃度においてもAChによってさらに収縮が増強された。すなわちCa^<2+>感受性亢進現象が観察された。この現象は選択的Rho kinase(ROCK)阻害薬であるY-27632によって完全に抑制された。また同気管支平滑筋にROCK-1およびROCK-2タンパク質が発現していることも明らかになった。以上から過敏性気管支ではRhoA/ROCK系を介したCa^<2+>感受性亢進が作動することが判明した。 4.ラットにおける抗原誘発気道平滑筋収縮反応の増強は、気管支では観察されたが、気管では認められなかった。抗原反復チャレンジした場合、RhoAタンパク質の発現増大は気管支では見られたが、気管では見られなかったという事実と対応していた。以上から気道過敏性の発現にはRhoAタンパク質の介在が不可欠であることが示された。 5.ラット気管支平滑筋を酵素液で単離し、共焦点レーザー操作蛍光顕微鏡下にRhoAの一次抗体と二次抗体を用い、ACh処置によりRhoAが細胞膜周辺へ移行することすなわち活性化が証明できた。
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