研究概要 |
1.ハムスター心筋梗塞モデルの急性期におけるキマーゼ特異的な阻害薬BCEABとNK3201の効果 BCEAB(100mg/kg Per day, p.o.)の梗塞3日前よりの投与は梗塞3日後の心臓キマーゼの活性を著明に抑制しそれに伴う心機能および生存率の改善効果が認められた(Life Sci. 2002;71:437-446)。 NK3201(30mg/kg Per day, p.o.)の梗塞前と梗塞後からのいずれの投与においてもBCEABと同様な予後改善効果が認めており(投稿中)、一種類のキマーゼ阻害薬だけでなく、梗塞後の予後改善効果がその他の阻害薬にも共通することより、心筋梗塞後に活性化されるキマーゼが本病態において非常に重要な役割を果たすという我々の学説がより根拠強く支持されたのではないかと考えている。 2、ハムスター心臓虚血再灌流後の心筋梗塞モデルにおけるキマーゼの役割についての検討 我々は心筋梗塞後の慢性期における慢性心不全への変遷にキマーゼが関与するか否かを検討するために、本モデルも作製を試みた。今まで、ハムスター心臓虚血再潅流後の心筋梗塞モデルにおいて、心臓ACEの活性化に加えて、キマーゼの活性化も認められていることを梗塞3日と28日後のモデルで確認し、今の段階、もっと長期モデル(六ヶ月モデル)を作製して、ACE阻害薬、キマーゼ阻害薬、ACEとキマーゼ阻害薬の併用そしてアンジオテンシンII受容体拮抗薬のそれぞれの効果を比較検討中である。後二ヶ月位で結果が明らかになる。 3、イヌ冠動脈結紮後の心室性不整脈の発生率に対するキマーゼ阻害薬の効果 心筋梗塞後の予後改善効果におけるキマーゼ阻害薬の機序を検討するために本モデルを作製した。イヌの冠動脈を永久結紮すると心室性の不整脈が約30分後より認められ、8時間に渡る総不整脈数はおよそ2万個であった。血中AII濃度には梗塞後の経時的な上昇が認められたが血中ノルアドレナリン濃度には有意な変化が認められなかった。冠動脈結紮8時間後の心臓ACEおよびキマーゼ活性の上昇に伴い、心臓総AII産生能が著明に上昇した。キマーゼ特異的な阻害薬であるTY51184の投与は心臓キマーゼ活性を抑制し、血中AII濃度の上昇を抑制すると共に、不整脈の発生率を顕著に抑制した。CV-11974の投与も梗塞後の不整脈の発生率を著明に抑制し、その程度はTY51184とほぼ同等であった。以上のことから、TY51184の抗不整脈効果には心臓虚血時のキマーゼ活性化によって過剰に産生されたAIIが直接AT1受容体を介して梗塞後の不整脈に直接関与することが示唆された(投稿準備中)。
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