塩素イオンポンプ55kDaサブユニットの機能解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670103
• 研究機関: 関西医科大学
• 研究代表者: 北川 香織 関西医科大学, 医学部, 助手 (10165813)
• キーワード: 塩素イオンポンプ / ラット脳細胞膜 / 免疫電子顕微鏡法 / アンチセンスオリゴヌクレオチド / 細胞内塩素イオン濃度 / Cl^--ATPase

研究概要

1.塩素イオンポンプ55kDaサブユニット(CIP55)の局在の解析
GST-ClP55融合蛋白質特異抗体を用いた脳における発現局在の解析により、本抗体は、大脳皮質および海馬の大型神経細胞膜およびその樹状突起の細胞膜に強く反応し、小脳のプルキンエ細胞でも同様に反応した。また、免疫電子顕微鏡法でも海馬の神経細胞膜上に金粒子が確認され、ClP55は、膜貫通領域をもたないが細胞膜にアンカーした状態で細胞膜に存在することを明らかにした。
2.アンチセンスオリゴヌクレオチド導入実験
ラット胎児脳初代海馬神経細胞にClP55cDNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを2日間導入し以下の結果を得た。ClP55蛋白質の発現量は、アンチセンスオリゴヌクレオチド導入により有意に(34%)抑制されることを確認した。塩素イオン感受性蛍光色素により測定した、アンチセンスオリゴヌクレオチド導入細胞の細胞内塩素イオン濃度は、センス導入細胞(5〜6mM)と比較して、約4倍高い濃度(18〜24mM)を示すことを明らかにした。また、アンチセンス導入細胞膜分画のCl^--ATPase活性は、センス導入細胞(9.93μmol Pi/mg protein/hr)と比較して、約31%(6.84μmol Pi/mg protein/hr)の抑制を示すことを明らかにした。このことよりClP55は、塩素イオンポンプのサブユニットとして細胞内塩素イオン濃度調節に重要な役割を果たしていると考えられ、以上の結果は、Biochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載した。

研究成果

• [文献書誌] Kaori Kitagawa: "Molecular cloning and characterization of Cl^-pump-associated 55 kDa protein in rat brain"Biochemical and Biophsical Research Communications. 289・2. 363-371 (2001)
• [文献書誌] Takao Irie: "An anxiolytic agent, dihydrohonokiol-B, inhibits ammonia-induced increases in the intracellular Cl^-of cultured rat hippocampal neurons via GABAc receptors"Neuroscience Letters. 312・2. 121-123 (2001)
• [文献書誌] Naoki Hattori: "GH, GH receptor, GH secretagogue receptor, and ghrelin expression in human T cell, B cells, and neutrophils"The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 86・9. 4284-4291 (2001)
• [文献書誌] Kyoko Yagyu: "Amyloid β proteins inhibit Cl^--ATPase activity in cultured rat hippocampal neurons"Journal of Neurochemistry. 78・3. 569-576 (2001)
• [文献書誌] Xun-Ting Zeng: "Developmental changes in Cl^--ATPase activity in rat brains"Neuroscience Letters. 302・2-3. 101-104 (2001)
• [文献書誌] Chiyoko Inagaki: "Cl^--ATPase in rat brain and kidney"Journal of Experimental Zoology. 289・4. 224-231 (2001)