研究課題
【冬眠の神経調節機構の解明】自然冬眠導入期ハムスターの側脳室にアデノシンA1受容体拮抗薬を投与すると、体温が急激に上がり低体温から回復したが、オピオイド拮抗薬の投与では低体温からの回復は観察されなかった。一方冬眠期ハムスターの側脳室にオピオイド拮抗薬を投与すると、体温が急激に上がり冬眠から回復したが、アデノシンA1受容体拮抗薬の投与では冬眠からの回復は観察されなかった。TRHの側脳室投与では、冬眠導入期、冬眠期いずれの時期においても回復が認められた。これらの結果から冬眠導入期には中枢アデノシン系が、冬眠時の低体温維持には中枢オピオイド系が、低体温からの熱産生には中枢TRH系が関与していると考えられる。【冬眠時の神経保護因子の検索】ラット培養大脳皮質ニューロンにおいて、培養温度を22℃以下に低下させると、温度低下に依存したアポトーシス様の神経細胞死が発現した。18℃で培養した場合、ラット(非冬眠動物)とハムスター(冬眠動物)の神経細胞では同様の時間経過で神経細胞死が発現した。18℃の低温培養により発現する神経細胞死に対し、アデノシンは用量依存性に神経保護作用を発現させた。アデノシンの神経保護作用はA1受容体拮抗薬およびA2受容体拮抗薬により減弱した。非選択的オピオイド受容体作動薬であるモルヒネも用量依存性の神経保護作用を発現させ、この効果はナロキソンにより拮抗された。さらにヒスタミン、セロトニンも神経保護作用を発現させた。これらの結果から、アデノシン、オピオイド類、ヒスタミン、セロトニンなどの冬眠制御物質は、冬眠時ハムスターの体温を下降、低体温を維持させるとともに、低温により誘発される障害から神経を保護し、神経機能を維持していると考えられる。
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