研究課題/領域番号 |
13670106
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
薬理学一般
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
塩見 浩人 福山大学, 薬学部, 教授 (60025715)
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研究分担者 |
大元 望記子 , 助手 (20309636)
田村 豊 福山大学, 薬学部, 助教授 (30217202)
中村 明弘 福山大学, 薬学部, 教授 (70172393)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 冬眠 / アデノシン / β-エンドルフィン / TRH / 褐色脂肪細胞 / 低体温 / 体温上昇 / 神経保護因子 |
研究概要 |
冬眠動物であるハムスターを用い、非冬眠時の中枢性体温下降機構を検討すると共に、冬眠時の体温下降機構、冬眠維持機構、冬眠からの覚醒機構の中枢性制御機構について検討を行い、以下の知見を得た。冬眠導入期(冬眠開始より17時間後)ハムスターの側脳室にアデノシンA1受容体選択的遮断薬CPT3nmolを投与するとハムスターの体温は自然に覚醒する場合と同様、約3時間で正常体温の37℃まで上昇したが、冬眠維持期(冬眠開始より30時間後)に投与しても冬眠からの回復は見られなかった。一方、オピオイド受容体拮抗薬ナロキソン10nmolの投与は冬眠導入期においては体温上昇は起こさなかったが、冬眠維持期に投与すると自然に覚醒する場合と同様、約3時間で正常体温の37℃まで上昇した。この結果は、冬眠導入期の体温下降には中枢アデノシン系が、冬眠の維持には中枢オピオイド系が重要な役割を演じていることを示している。また、TRHの側脳室内投与では冬眠導入期、冬眠維持期のどちらにおいても体温を上昇させた。従って、冬眠からの覚醒には中枢TRH系が重要な役割を担っていると考えられる。また、冬眠からの覚醒期における体温上昇には中枢TRH-交感神経系を介して褐色脂肪細胞の熱産生を促進させることが強く示唆された。ラット培養大脳皮質ニューロンにおいて、培養温度を22℃以下に低下させると、温度低下に依存したアポトーシス様の神経細胞死が発現した。18℃の低温培養により発現する神経細胞死に対し、アデノシンは用量依存性に神経保護作用を発現させた。非選択的オピオイド受容体作動薬であるモルヒネも用量依存性の神経保護作用を発現させ、この効果はナロキソンにより拮抗された。さらにヒスタミン、セロトニンも神経保護作用を発現させた。これらの結果から、アデノシン、オピオイド類、ヒスタミン、セロトニンなどの冬眠制御物質は、冬眠時ハムスターの体温を下降、低体温を維持させるとともに、低温により誘発される障害から神経を保護し、神経機能を維持していると考えられる。
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