研究概要 |
桂木らは、従来より主に平滑筋細胞において、angiotensin IIおよびα,β-methylene ATP(α,β-mATP)などのアゴニスト刺激によるオートクリン/パラクリン物質としてのATPの放出に関与する細胞内シグナル伝達について検討を行い、IP_3産生増加とATP放出との関連を示すいくつかの知見を報告してきた。本研究では、特にα,β-mATPによるモルモット精管平滑筋細胞からのATP放出メカニズムを回腸におけるそれとの比較により検討した。その結果、精管からのATP放出は、回腸からのそれとは全く異なり、ryanodine受容体拮抗薬のruthenium red(RR)や高濃度ryanodineによりほぼ完全に拮抗されたが、phospholipase C阻害薬のU-73122、細胞内Ca^<2+>キレーターのBAPTA、さらにCa^<2+>ATPase阻害薬のthapsigarginによって全く影響されなかった。さらに、両細胞でのryanodine受容体(RyR)の分布の程度について、RT-PCR法により検討したところ、RyR-1でなく、RyR-2のmRNAの発現はいずれに対しても同程度に見られた。従って、このようなATP放出に見られる細胞内シグナルに関する異なった結果は小胞体上の両受容体のこれら細胞間での分布の違いによるものではなく、恐らく、α,β-mATPの作用するP2受容体のサブタイプが回腸と精管では異なっているものと考えられる。なお、精管では、caffeineによるATP放出も見られ、これはα,β-mATPおよびRR前投与で著しく抑制された。以上のことより、精管平滑筋細胞からのATP放出にはryanodine受容体を介する小胞体からのCa^<2+>シグナルが関与していることが明らかになった。
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