研究概要 |
ATPはそれ自身のP2XおよびP2Y受容体を介した細胞外情報伝達物質として、筋収縮、痛み、免疫および炎症反応など、多彩なオートクリン/パラクリン作用を示すことが明らかにされてきたが、依然として、ATPの細胞外放出とその細胞内シグナル機構については不明のままである。 本研究は、引き続き、アゴニスト刺激によるATP放出に関与する細胞内シグナルがいかなるものであるかを明らかにする目的で行われた。 平成13年度は、モルモット結腸紐からの培養平滑筋細胞の灌流実験で、Angiotensin II(Ang II)によるATP放出に関与する細胞内シグナルについて検討された。Anf II(0.3-1μM)によるATP放出がAT_1受容体刺激により引き起こされること、また、この放出がU-73122、thapsigargin、BAPTA/AMなどの細胞内シグナル伝達阻害薬によって拮抗されること、さらにはAng IIが本培養細胞内のIns(1,4,5)P_3産生を促進し、これは、AT_1受容体を介していることなどの知見から、Ang IIによる結腸紐細胞からのATP放出には小胞体のIns(1,4、5)P_3受容体を介した細胞内Ca^<2+>シグナルが関与していることが明らかにされた。(Biochem. Biophys. Res. Commun.,293,686-690,2002) 平成14年度は、同精管の培養平滑筋細胞からのcaffeineによるATP放出とその細胞内シグナルについて検討が行われた。Ca^<2+>除去Krebs液による灌流実験で、3mM caffeineは、速やかで著明なATP放出を引き起こし、これは、thapsigarginやBAPTA/AMにより拮抗され、さらに30μM ryanodineおよび100μM tetmcaineなどのryanodine受容体拮抗薬によりほぼ完全に抑制された。本培養細胞中の[Ca^<2+>]iはfluo 4を示標とした測定実験でcaffeineにより著しく上昇し、これはtetracaineによって完全に拮抗された。また、RT-PCR実験で精管平滑筋にはRyR2のmRNAの発現が明らかにされた。これらの結果から、caffeineによる精管平滑筋からのATP放出には、小胞体のryanodine受容体(恐らくRyR-2)を介した細胞内Ca^<2+>遊離の関与が明らかとなった。(Mol. Pharmacol. in press)
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