研究概要 |
PDZ領域を持つ蛋白質が他の蛋白質のPDZ-bindingモチーフを認識し相互作用する例が数多く報告されており、特に受容体とPDZ領域を持つ分子の相互作用は受容体を介する情報伝達の制御に深く関わる。本研究は代謝型グルタミン酸受容体(mGluRs)の機能解析を目的とし、まずmGluR結合蛋白質の検索を行い、同定した蛋白質をタマリンと名付けた。次にタマリンによるmGluR制御機構の解析を行った。 1 タマリンはPDZ領域、leucine-zipper、proline-richな領域,、C末端のPDZ bindingモチーフ等の蛋白質相互作用に関わる領域を持ち、足場蛋白であると考えられる。タマリンのPDZ領域はグループ1及び2のmGluRやGABAB2受容体のC末端と結合し、leucine-zipperはguanine nucleotide exchange factorであるcytohesinのcoiled coil領域と結合した。培養細胞及び初代培養神経細胞においてタマリンは受容体輸送を促進しグループ1mGluRの細胞膜表面での発現量を増加した。 2 さらに解析を進め、タマリンがシナプス後に存在するPSD-95、S-SCAM及びSAPAP1/3等の足場蛋白と結合することを発見した。従って、タマリンを中心とするこの蛋白複合体がグループ1mGluRの情報処理マシーンを形成すると考えられる。またタマリンは蛋白輸送に関わるMint2とCASKとも相互作用を示した。 我々が同定したタマリンは神経細胞のシナプス後膜の組織形成や蛋白輸送に関わる分子と相互作用する。つまり、本研究によりmGluRのクラスタリング、輸送及び情報伝達の分子機構の理解が深まった。
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