研究概要 |
生体内でのグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型蛋白質の代謝メカニズムを解明するため、GPIアンカーの局在を簡便に検出するべく、GPIアンカー型に変換したGFPレポーター蛋白質(EGFP-GPI)を構築した。これを培養細胞に導入すると形質膜、ゴルジ体やミクロソーム画分、また膜上でも特にlipid raftに局在することがわかり、同構造のマーカーになりうることが示された。また、マウス個体に導入すると、上皮系組織や神経系において頂端部局在を示すなどGPIアンカー型蛋白質の諸性質を満たすとともに、予想以上にGFP蛍光蛋白質が、外分泌腺や精巣において遊離していることを見い出した。以後、この現象に特に着目し、EGFP-GPIや同じくGPIアンカー型蛋白質のひとつである胎盤性アルカリフォスファターゼの遊離を指標に、マウス精巣よりGPIアンカー型蛋白質遊離因子の精製・構造解析を行った。その結果、この分子は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)であることが判明した。また、HeLa, F9, HEK293等の培養細胞をこの酵素で処理すると、種々のGPIアンカー型蛋白質(EGFP-GPI、CD59、DAF、プリオン蛋白質、Sca-1、Thy-1)が細胞表面より遊離することを見い出した。今回の研究から、ACEには、アンギオテンシンI、ブラディキニンやいくつかの神経ペプチドを基質とするジペプチジルカルボキシペプチダーゼ活性のみならず、GPIアンカー型蛋白質を細胞膜より遊離する新たな活性を持つことが明らかになった。
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