私共はこれまでに低分子量G蛋白質Ralの下流分子の機能解析を行ってきた。私共がRalの標的蛋白質RalBP1に結合する蛋白質として同定したPOB1は、EpsinならびにEps15と結合し、レセプターのリガンド依存性エンドサイトーシスの制御に関与している。昨年度の本研究により、POB1のC末端側に結合する新規蛋白質としてPAG2を同定した。今年度は、以下の点が明らかとなった。 (1)内在性のPOB1とPAG2が複合体を形成した。PAG2のCHO細胞への過剰発現は、パキシリンの接着斑への局在を阻害し、同時に、CHO細胞の運動を抑制した。POB1を過剰発現すると、PAG2と結合することによりPAG2による運動抑制を解除した。PAG2と結合しない変異POB1にはその効果が無かった。したがって、POB1はエンドサイトーシスを制御すると共に、PAG2と結合することにより細胞運動も制御する可能性が強く示唆された。 (2)POB1の結合蛋白質であるEpsinは、CHO細胞のインスリン刺激により、M期におけるcdc2によるリン酸化部位と異なる部位がリン酸化された。また、ホルボールエステル処理と過バナジン酸処理によってもリン酸化された。インスリンによるリン酸化はワートマニンにより抑制され、ホルボールエステルと過バナジン酸によるリン酸化は抑制できなかった。一方、ホルボールエステルによるリン酸化は、スタウロスポリンにより抑制できたが、インスリンによるリン酸化は抑制できなかった。したって、Epsinは複数の経路によりリン酸化されることが明らかになった。現在Epsinのリン酸化の生理的意義を解析中である。
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