研究概要 |
本研究ではRalの下流に存在する蛋白質POB1の新しい生理的意義の確立を試み、以下の結果を得た。 (1)POB1はASAP1/PAG2とRalBP1とを異なった部位で結合する。 POB1のC末端側をbeitとしてマウス脳cDNAライブラリーをスクリーニングし、ASAP1を単離した。ASAP1のヒトオルトログであるPAG2とPOB1のdeletion mutantsを作製し、相互の結合部位を同定した。POB1は3個のプロリンリッチモチーフ(アミノ酸番号338-345,374-383,422-428)を持つ。このうちプロサンリッチモチーフ422-428とASAP1/PAG2のC末端に存在するSH3ドメインとが結合した。プロリン423/426をアラニンに変異させたPOB1P423/426AはRalBP1とは結合し、PAG2とは結合しなかった。POB1のPAG2結合部位はRalBP1結合部位と異なっており、PAG2とRalBP1はPOB1を介して三者複合体を形成した。 (2)POB1はPAG2による細胞移動の抑制を解除する。 PAG2は細胞の接着能には影響せず、パキシリンの接着班への集積とフィブロネクチン依存性の細胞移動を抑制した。PAG2と結合する野生型POB1は、PAG2によるパキシリンの接着班への集積抑制とフィブロネクチン依存性細胞移動の抑制を解除した。一方、RalBP1とは結合しPAG2とは結合しないPOB1P423/426Aは解除できなかった。Arf GAP活性は保持しているが、POB1との結合部位を欠くPAG2-(1-703)は細胞移動を抑制し、POB1はこの抑制を解除できなかった。従ってPOB1とPAG2の結合により、PAG2の生理作用が制御される可能性がしめされた。 以上、POB1はPAG2と相互作用して細胞外マトッリクス依存性の細胞移動に関与する可能性が示された。
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