研究概要 |
分極したMDCK細胞にLPP(以前にPAP2と呼ばれていた酵素)アイソザイムを安定発現させ、共焦点レーザー顕微鏡にて観察したところ、LPP1はapicalドメインへ、LPP3はbasolateralドメインへそれぞれ局在していた。ビオチン標識による生化学的解析によっても、約90%のLPP1がapicalドメインに、LPP3は約70%がbasolateralへと局在していた。しかしLPAを基質とした細胞表面活性を測定したところ、LPP1発現細胞ではapical面での活性がbasolateral面での約6倍高い値を示した一方で、LPP3発現細胞ではapical面とbasolateral面でのLPA水解活性がほとんど同じという結果を示した。LPP3のbasolateralドメインへの分布がビオチン標識と細胞表面活性という2つのアッセイ法により食い違いを見せる理由は今後の検討課題の一つである。各アイソザイムのターゲティングシグナルを解析したところ、LPP1のapicalシグナルは細胞質内に位置するN末から2番目から7番目までの6残基、FDKTRLという配列であることが明らかになった。一方LPP3のbasolateralシグナルとして、もっともN末寄りの細胞質側ループ中に存在する110番目と111番目の二つのチロシン残基が機能していることが示された。 (以上、Jia et al.,2003,FEBS Lett,552,240-246)この知見にはLPP1とLPP3が細胞表面膜上の異なるラフトに結合することが重要な働きをしているかもしれない。両アイソザイムはCHAPSで細胞を可溶化したときにはラフト結合能を示すが、Triton x-100を使うとLPP1だけが完全に可溶化してしまう。(以上、Kai et al.、投稿準備中)卵巣ガンはLPA刺激によって著しい増殖を示すが、LPPを発現させるとガン化の進行が抑制されるので、細胞表面膜に局在する本酵素が細胞外のLPAを加水分解することによって細胞増殖速度を制御している可能性が示唆されて興味深い。(以上、Miyamoto et al.,投稿中)
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