aPKC(atypical protein kinase C)-ASIP(aPKC secific interacting protein)を含むPAR複合体は、腺虫からほ乳類に至るまで保存されたシステムであり、細胞の極性形成や維持に関わる。ほ乳類の上皮細胞では、ASIP、及びaPKC はtight junction(TJ)に局在し、aPKCλのkinase deficient mutant(λKN)の高発現がMDCK細胞のTJの再構成を阻害することから、aPKCによるリン酸化反応がTJの構築に重要であると考えられている。しかし、その基質蛋白質はもちろん、aPKC-ASIP複合体がTJの構築過程にどのように寄与しているか、その詳細は不明である。本研究では、TJの構築過程に於けるaPKC-ASIPの機能を分子レベルで明らかにすることを目標とし、以下のことを明らかにした。 これまでその機能が不明であった、ASIPの進化的に保存された領域CR1が、ASIP同士の結合による多量体形成に寄与していること、またASIPの多量体形成がASIPのみならず、共に複合体を形成するaPKCやPar-6のTJへの安定的な局在に必要であることを明らかにした。更にCR1領域のみのmutantを薬剤依存的に高発現する細胞株を作製し、CR1 mutantの高発現がTJの初期形成過程の進行を遅らせることを明らかにした。即ち、ASIPはscaffold proteinとしてaPKCを含むPARタンパク質群をTJにリクルートすることにより、TJの形成過程に寄与している可熊性が示唆される。今後、aPKCの基質蛋白質の同定を行うにあたって、CR1 mutantの誘導発現株は有効なツールとなると考えられる。
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