aPKC(atypical protein kinase C)-ASIP(aPKC specific interacting protein)を含むPAR複合体は、腺虫からほ乳類に至るまで保存されたシステムであり、細胞の極性形成や維持に関わる。ほ乳類の上皮細胞では、ASIP、及びaPKCはtight junction(TJ)に局在し、aPKCλのkinase deficient mutant(λKN)や変異ASIPの高発現がMDCK細胞のTJの再構成を阻害することから、TJの構築を伴う細胞極性形成におけるaPKC-ASIP複合体や、aPKC活性の重要が認められているが、、その詳細な分子機構は未だ不明である。本研究では、細胞極性形成過程に於けるaPKC-ASIPの機能を分子レベルで明らかにすることを目標とし、以下のことを明らかにした。 aPKC結合蛋白質のひとつとして知られる14-3-3蛋白質は、aPKCやASIPと同様に線虫初期胚の極性形成の過程に必須であることが報告されている。本研究では、ほ乳類ASIPと14-3-3とが結合することを突き止めた。この結合は、ASIP上の特定のSer残基のリン酸化依存的であることが明らかになった。実際にこの部位のリン酸化を特異的に認識する抗体を作製し、MDCK内在性ASIPのリン酸化について検討した所、細胞の極性化に伴いリン酸化の程度が変動していることを見い出した。この部位を有するGST融合ペプチドを作製し、in vitroでrecombinant aPKCを用いたkinase assayを行ったところ、aPKCがASIP上のこのSer残基をリン酸化しうることが明らかになった。即ち、aPKCはASIPのこのSerをリン酸化することにより、ASIPと14-3-3の結合を制御している可能性が示唆された。
|