研究概要 |
現在、種々の細胞内情報伝達系において、情報伝達関連分子が細胞膜や細胞内小器官膜上の特定微小領域に局在化して情報伝達の場を形成することが、おのおのの細胞内情報伝達系機能遂行に重要であることが明らかになっている。このうち、細胞増殖等の重要な細胞機能に関与しているGPIアンカー蛋白質を介した細胞内情報伝達系では、ラフトと呼ばれる微小細胞膜領域に一群の関運情報伝達分子が局在化することが明らかになっている。このことから、GPIアンカー蛋白質を介した細胞内情報伝達系の分子メカニズムを解明する上で、ラフトの形成機構を明らかにすることが重要であると考えられている。最近、このラフト形成に普遍的膜融合装置であるSNARE系の作用機構と活性制御機構については不明な点が多い。そこで、本年度の研究では、昨年度に引き続いてラフト形成に関与している可能性が高いSNARE系構成因子であるシンタキシン-3に結合する新たな蛋白分子の同定を試み、新規シンタキシン-3結合蛋白質としてTaxilinを発見することに成功した。Taxilinは、546個のアミノ酸からなる分子量61,890の蛋白分子で、c末端側に長いコイルド-コイル領域を有していた。現在、シンタキシンには、シンタキシン-3以外に約16種類のアイソフォームが存在するが、このうち、Taxilinは、シンタキシン-3以外にシンタキシン-1とシンタキシン-4にも結合した。しかし、シンタキシン-7やシンタキシン-8には結合しなかった。Taxilinは、ほとんどの組織に発現していたが、おのおのの組織におけるTaxilinの生理機能に関しては未だ明らかではない。しかし少なくとも、neuroendocrine様細胞においては、TaxilinはCa^<2+>依存性の分泌反応に関与している可能性が高い。今後、Ca^<2+>依存性の分泌反応におけるTaxilinの作用機構を解明すると共に、ラフト形成におけるTaxilinの機能と作用機構について解析を進めていく予定である。このように、本研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ達成することができた。
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