研究概要 |
現在、種々の細胞内情報伝達関連分子が、細胞膜や細胞内小器官膜上の特定微小領域に局在化して情報伝達の場を形成することが、細胞内情報伝達系の機能遂行に重要であることが明らかになっている。このうち、細胞増殖等の重要な細胞機能に関与しているGPIアンカー蛋白質を介した細胞内情報伝達系では、ラフトと呼ばれる徴小細胞膜領域に一群の関連情報伝達分子が局在化することが明らかになっている。このことから、ラフトの形成機構を明らかにすることが、GPIアンカー蛋白質を介した細胞内情報伝達系の分子メカニズムの解明につながると考えられている。最近、このラフト形成に普遍的膜融合装置であるSNARE系が関与していることが明らかになりつつある。しかし、ラフト形成におけるSNARE系の作用機構と活性制御機構については不明な点が多い。そこで、本研究では、ラフト形成に関与している可能性が高いSNARE系構成因子であるシンタキシン-3に結合する新たな蛋白分子の同定を試み、p270とp80の新たなシンタキシン結合蛋白質を同定することに成功した。このうち、p270は、細胞膜直下の主要細胞骨格構成因子であるα-Fodrinであった。α-Fodrinは、シンタキシン結合蛋白質であるMunc18やSNAP-25と競合的にシンタキシンに結合してSNARE複合体形成を制御している可能性が示唆された。一方、p80は、546個のアミノ酸からなる分子量61,890の新規蛋白分子であった。そこで、私共は、この新規シンタキシン結合蛋白質をTaxilinと命名した。Taxilinは、C末端側に長いコイルド-コイル領域を有しており、ほとんどの組織に発現していた。Taxilinは、シンタキシン-3以外にシンタキシン-1とシンタキシン-4にも結合した。本研究から、α-FodrinやTaxilinが、シンタキシン-3との結合を介してラフト形成に関与している可能性が出てきた。このように、本研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ達成することができた。
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