我々は、オピオイド受容体μ、δ、κの類縁体であるROR-C受容体の内因性リガンドであるノシセプチン/オーファニンFQ(Noc/OFQ)の前駆体蛋白上に、Noc/OFQの痛覚反応を抑制する生理活性ペプチドを見いだし、ノシスタチンと名づけた。ノシスタチンとNoc/OFQは、脊髄後角においてはともに表層に存在し、各々の受容体を介してその作用を発揮することを明らかにしてきた。本研究では、ノシスタチン受容体cDNAのクローニングおよび同一前駆体上に隣り合わせに存在し痛覚反応において相反する作用を有する2つのペプチドの産生、遊離機構および、産生調節を担うと考えられるペプチドのプロセッシングに関与する蛋白分解酵素の解明を目的とし、生物発光蛋白の導入さらに、その蛋白間のエネルギー移動(BRET)を応用した方法の確立を試みた。 (発光酵素)-(ノシスタチン・Noc/OFQ)-(GFP)の融合蛋白の遺伝子ベクターを構築し、Cos細胞に導入し、蛍光顕微鏡およびWestern blottimgによりGFPの発現を、酵素活性測定により発光酵素の発現を確認した。この融合蛋白は、ノシスタチン・Noc/OFQペプチドがプロセッシングされない場合は発光酵素の光はエネルギー移動により、GFPを励起し緑色の発光となることを認めた。さらに、ノシスタチン・Noc/OFQペプチドがプロセッシングされた場合は、発光酵素自体の青色光を発することを認めた。これらの結果より、ペプチドのプロセッシングをモニターできるプローブが確立できた。さらに、発色光を指標にペプチドの分解過程を追跡し、プロセッシング酵素のクローニング、微弱発光解析顕微鏡装置により発光を追跡、プロセッシング過程のリアルタイム解析を試みている。
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