1.多発性硬化症におけるPAF受容体の役割 ヒトの疾患である多発性硬化症の動物モデルを作るためにオリゴデンドロサイトグリコプロテイン断片(MOG_<35-55>)をフロイントアジュバントとともにPAF受容体欠損C57BL/6マウスに免疫した。多発性硬化症様の症状の発症に要した平均日数や発症率は野生型マウス群と比べてPAF受容体欠損マウス群では違いが認められなかった。しかし四肢の麻痺の程度をスコア化したところ、PAF受容体欠損マウスは野生型マウスに比して有意に症状が軽いことが明らかになった。来年度は麻痺発症の何処にPAFが関与するのかを明らかにするために、有随神経細胞の脱随とT細胞を中心とした炎症性細胞の浸潤の程度調べ、多発性硬化症発症機構に組織・細胞レベルから迫る予定である。 2.疼痛におけるPAF受容体の役割 PAF受容体欠損C57BL/6マウスは足への熱刺激及び化学刺激(ホルマリンを皮下注)、カプサイシンに対し、野生型マウスに比べ有意に鈍麻になっていた。また痛覚伝達経路を担う神経細胞のうち、一次求心性神経細胞の細胞体(後根神経節)においてマウスPAF受容体のmRNAの発現がRT-PCRによって認められた。そこでマウス後根神経節の神経細胞をin vitroで培養してPAFで刺激したところ、細胞内カルシウム濃度の上昇が確認された。来年度は痛覚に大きく関与するとされるカプサイシン受容体(バニロイド受容体)の発現レベルを、抗体染色や定量的PCRによってPAF受容体欠損マウスの後根神経節において調べ、野生型マウスのものと比較することによって痛覚低下の機構を解明する予定である。
|