研究概要 |
私どもはこれまでに、組織の再生・修復で重要な役割を担うと考えられる細胞膜アンカー型細胞増殖因子としてEGFファミリーのメンバーであるHB-EGFを新規に同定し、皮膚の創傷治癒時にsheddingが亢進していることを報告してきた。本研究ではHB-EGF shedding酵素の同定と活性発現制御機構の解明を中心課題として行い、以下の結果を得た。 従来報告されている膜結合型メタロプロテアーゼADAM9によるHB-EGFプロセシングをADAM9ノックアウトマウス由来線維芽細胞を用いて検証した結果、ADAM9+/+線維芽細胞およびADAM9-/-線維芽細胞ともに、HB-EGFプロセシングはTPA刺激により一過性に誘導され、両者に有意な差は認められなかった。そこで新たなHB-EGF shedding酵素の同定を試み,ADAM12がHB-EGFのプロセシング酵素であることを示した。さらにHB-EGFプロセシングはADAM12ノックアウトマウス由来線維芽細胞では全く認められず、ADAM12がHB-EGFのプロセシング酵素の一つであると結論付けた。 ADAM12の細胞内ドメインに結合する蛋白を酵母two-hybridでスクリーニングし、その結果2つのSH3蛋白質PACSIN3と新規蛋白質Eve-1を同定した。PACSIN3は416アミノ酸からなりC-末端側に3つのSH3ドイメインを持つ。また、Eve-1は767アミノ酸からなりC-末端側に4つのSH3ドイメインを持つEve-1aと23アミノ酸の挿入配列を持ちその結果C-末端側に5つのSH3ドイメインを持つEve-1bの2つのアイソフォームを同定した。PACSIN3とEve-1のoverexpressionによりangiotensin II 依存性HB-EGF sheddingがそれぞれ部分的にかつ、共発現により相加的に抑制された。 以上の結果から、HB-EGFプロセシングにはADAM12が関与しており、酵素の活性化制御には複数のSH3蛋白質が関与している可能性が示唆された。
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