TPはチミジンをチミンと2-デオキーd-シリボースー1リン酸に可逆的に分解する酵素でDNA合成のサルベージ経路で働いている。TPは腫瘍に浸潤するマクロファージや末梢リンパ球、脾臓、クッファー細胞などでも発現が高いことなどから免疫機構になんらかの機能をもつのではないかと予想し、TPのノックアウトマウスを用いてて解析した。1)野生型マウスとノックアウトマウスにリステリア菌を腹腔内投与し、肝臓、脾臓内に残存する菌数を経時的に測定した。48、72時間でノックアウトマウスにおける残存菌数が著明に低くなっていた。このときの血中の種々のサイトカイン濃度を調べたところノックアウトマウスにおいてはIFN gammaの血中濃度の低下がみられなかった。またIL-10濃度は野生型ほど上昇しなかった。2)つぎにリステリア菌をマウス各五匹に感染させ、72時間後に肝臓、脾臓を摘出し各組織の初代培養を行った。ノックアウトマウス由来の肝臓細胞、脾臓細胞の培地中に放出されるIL-10の量はともに野生型由来のものより低下していた。3)DSSデキストランソデイウムサルフェイトを投与して大腸炎を人工的に作らせ、体重変化とIL-10産生を調べた。ノックアウトマウスの方が顕著な体重減少が認められ、大腸の単位蛋白質量あたりのIL-10産生量も著明に低下していた。4)腫瘍移植に対する抵抗性を比較した。マクロファージの標的細胞として用いられるEL-4リンフォーマ細胞を腹腔内に投与し、細胞数増加を調べたところべノックアウトマウスは明らかにEL-4リンフォーマの細胞増殖が抑えられていた。5)U937細胞、THP-1細胞はTPを内在的に発現する細胞でPMAとLPS刺激によってIL-10を産生する。このときTPの活性阻害剤を添加するとIL-10の産生が部分的に抑制された。現在TPがIl-10産生を誘導する機構を探索している。
|