プロスタグランジンF合成酵素の病態生理的役割

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670152
• 研究機関: 東亜大学
• 研究代表者: 渡部 紀久子 東亜大学, 工学部, 教授 (90211672)
• 研究分担者: 大石 賢二 東亜大学, 工学部, 教授 (10152042) ; 伊藤 誠二 関西医科大学, 医化学教室, 教授 (80201325)
• キーワード: プロスタグランジン / PGF合成酵素 / PGE合成酵素 / 組織化学 / 癌

研究概要

本研究はプロスタグランジン(PG)F合成酵素およびアラキドン酸代謝物の生理的役割および病態との関係を癌を中心に、生化学的、分子生物学的、免疫化学的、細胞生物学的研究により解明することを目的とする。不飽和脂肪酸であるアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼやリポキシゲナーゼにより各々種々のPGやロイコトリエン(LT)を生成する。PGやLTは中枢神経系から末梢臓器に至るまで生体内に広く存在し、神経系、免疫系、末梢臓器において様々な生理活性を惹起する生理活性物質である。代表研究者はPGF2α、9α,11β-PGF2を生合成するPGF合成酵素およびPGE2を生成する新しいタイプのPGE合成酵素を発見し、その生化学的・分子生物学的研究を行ってきた。PGFとPGEは生体内に広く存在し、臓器により相反する生理活性を惹起する。PGF合成酵素は肺、肝臓、腎臓、筋肉、末梢血のリンパ球など全身に広く存在し、代表研究者らが見い出した膜結合型PGE合成酵素-2は脳、心臓、腎臓、筋肉に存在する。本研究では腎臓を中心とする泌尿器系において本酵素の局在をPGE合成酵素の局在と共に正常と病態の組織を用いて生化学的、分子生物学的、免疫化学的研究を行った。本酵素およびPGE合成酵素は両酵素は正常組織においてその局在は異なり、腎臓におけるPGFおよびPGEの生理的役割は異なることが示唆された。また、両酵素は癌などの病態時において変動することが明らかになりつつある。この結果をさらに確かなものにするために、今後、検体数を多くし再現性をみる必要がある。また、ラットやマウスおよび疾患モデルマウス等を用い、両酵素の生理的、病理的役割を明らかにしていく。

研究成果

• [文献書誌] Naomi Tanikawa, Yoshihiro Ohmiya, Hiroaki Ohkubo, Seiji Ito. Kikuko Watanabe: "Identification and Characterization of a Novel Type of Membrane-Associated Prostaglandin E Synthase"Biochem Biophys Res Commun.. 291. 884-889 (2002)
• [文献書誌] K.Watanabe, T.Suzuki-Yamamoto, M.Nishizawa M.Fukui, K.Ishimura, S.Ito: "Roles of Prostaglandin F Synthase"Advances in Prostaglandin and Leukotriene Research. 73-76 (2002)
• [文献書誌] K.Watanabe: "Prostaglandin F synthase"Prostaglandins Other Lipid Mediat. 401-407 (2002)
• [文献書誌] Winchester SK, Imamura T, Gross GA, Muglia LM, Vogt SK, Wright J, Watanabe K, Tai HH, Muglia LJ.: "Coordinate regulation of prostaglandin metabolism for induction of parturition in mice"Endocrinology. 143. 2593-2598 (2002)
• [文献書誌] Suzuki-Yamamoto T, Toida K, Tsuruo Y, Watanabe K, Ishimura K.: "Immunocytochemical localization of prostaglandin F synthase II in the rat spinal cord"Brain Research. (in press).
• [文献書誌] 渡部紀久子: "酵素ハンドブック"朝倉書店(印刷中). (2003)