【研究の目的】 我々は最近、癌抑制遺伝子産物pRBと結合するタンパクとして分化抑制因子EID-1(EIA-like inhibitor of differentiation-1)をクローニングした。pRBはEID-1に結合することによってその機能を阻害し分化を促進する。EID-1は分化を促進する転写コアクチベーターであるp300のヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を阻害することによって分化を抑制する。EID-1の発見当初より、データベース上、EID-1類似分子の存在が示唆されていた。本研究ではこの分子のクローニングし、その機能解析を行うことを目的とした。 【方法と結果】 PCR法を用いてEID-1類縁分子EID-2(EID-1-like inhibitor of differentiation-2)のクローニングを行った。EID-2のmRNAはEID-1と異なり、組織特異的な分布を示し、特に心筋、骨格筋、肝臓、腎臓等で発現が多く見られた。EID-2もEID-1と同様に、分化に関わる転写因子の活性を阻害し、培養細胞系で過剰発現によって筋分化を抑制した。興味深いことに、EID-2はEID-1と異なり、p300の機能は阻害せずまた結合もしなかった。反対に転写を抑制するヒストン脱アセチル化酵素と結合することが明らかになった。 【考察】 本研究によってEID-2の存在を明らかにし、新しい分化抑制因子ファミリーという概念を確立することができた。今後、これら分子郡の、正常発生における役割および疾患(特に悪性腫瘍)との関連について研究を進めて行きたい。
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