我々は、Parkinと呼ばれる常染色体劣性遺伝性パーキンソニズム(AR-JP)の原因遺伝子産物にユビキチンリガーゼ活性があることを見出したことから、Parkinを中心に解析することで、多くの神経変性疾患にどのようにユビキチンシステムが関与しているのかを明らかにしていくことを目的とした。本研究において、Parkinの遣伝子破壊マウスの作製を行っている。ヒトに近いモデル生物での今後の研究は、疾患解析を行う比較的最終段階において有効な手段となると期待される。 また、Parkin結合蛋白質を検索する目的で、酵母Two-hybrid法、培養細胞でのタグ付きparkin発現株の樹立とそこからのaffinity精製、pull-down法を行い、幾つかの候補蛋白質を得た。現在はこれらに焦点を絞って解析を継続している。 マウスとの比較研究をする目的で、線虫におけるparkin遣伝子破壊株を解析している。線虫はparkinと考えられる遺伝子が存在する最下等に属する実験モデル生物であることからParkinの機能を知る上では有用な情報をもたらしてくれると考えている。現在のところ、東京女子医大生理学第2教室三谷昌平助教授、および安藤恵子助手のご厚意により、2アリル取得できているが、いずれも生存には必須でなかった。parkinプロモーターの解析から、parkinは一部の神経細胞に弱く発現していることが示唆されているが、この結果からparkinの機能を予測するには至っていない。今後は生化学的手法と、遺伝学的手法を組み合わせて解析を継続することで、研究を発展させていきたい。
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