研究概要 |
RING finger配列を有する蛋白質の1つであるPMLは,PODとよばれる細胞核内封入体を形成する.ヒト急性前骨髄球性白血病(APL)では,PML遺伝子と転写因子であるレチノイン酸レセプターα(RARα)遺伝子間の転座が高頻度におこる.APL治療において,レチノイン酸投与による前骨髄球分化誘導療法をおこなうとレチノイン酸刺激により何らかのシグナルが入りPOD構造が正常に戻り,PML-RARα融合蛋白質がユビキチン依存性選択的に分解される.しかし,レチノイン酸刺激によるユビキチン活性化の分子機構は,全く明らかになっていない. PML蛋白質と結合する他の核内蛋白質(Ret,HIF1-alpha)がPMLあるいはPML-RARα融合蛋白質に分解シグナルを与えるかどうかを検討するため,前骨髄球性白血病細胞HL-60細胞株あるいはヒト腎臓由来HEK293細胞株に遺伝子を導入し,レチノイン酸(あるいは亜ヒ酸ナトリウム)およびプロテアソーム阻害剤(MG132)存在下で蛋白質を発現させた.この細胞溶解液を抗PML抗体で免疫沈降したのち,抗PML抗体でイムノブロットしたところ,PML蛋白質およびPML-RARα融合蛋白質の分解には影響を与えなかった.また,亜ヒ酸ナトリウムを加え,組換えユビキチン,PML蛋白質,各組換えE2蛋白質の存在下でユビキチン再構成アッセイをおこなったが,特異的な蛋白質分解は認められなかった.しかしながら,レチノイン酸(あるいは亜ヒ酸ナトリウム)存在下でPMLを免疫沈降した結果,ポリSUMO化力塙度におこることがわかった. すなわち,結果としてPML蛋白質は典型的なRING fingerモチーフを持つにもかかわらず,ユビキチン経路におけるE3活性をもたないが,今後,PMLのSUMO化の増強に伴う細胞学的な変化を解析していく必要性がある.
|