研究概要 |
1.小型の肺腺癌でのMMP2,MMP9の活性化量と組織形態像の関係 本年度の研究で小型の肺腺癌の手術例59例についてgelatin zymographyを用いてMMP-2,MMP-9の活性化量と肺腺癌組織像との関係を明らかにした.線維芽細胞の増生巣のある腺癌と増生巣のない腺癌ではMMP-2,MMP-9の総量に差はなかったが、活性化MMP-2の量は線維芽細胞増生巣のある腺癌で高値を示した。すでに我々の研究では線維芽細胞増生巣のある肺腺癌は増生巣のない肺腺癌に比べ生命予後が悪いことを明らかにし,線維芽細胞増生巣の有無が癌の浸潤の有無に対応している可能性を考えてきたがその根拠は得られていなかった.今回の結果で線維芽細胞増生巣の有無とMMP-2活性化量との間に相関が認められたことで線維芽細胞増生巣の存在は癌浸潤に関係しており,肺腺癌の初期浸潤にはMMP-2活性化が重要な因子の1つであることを明らかにすることができた。 2.Film in situ zymography(FIZ)を用いてより詳細に浸潤部でのMMP-2活性の局在を解析することを目的に研究を計画した.まずFIZの有用性を検証するために上皮内癌,微小浸潤癌などの形態的所見が明確な子宮頚部腫瘍(異形成,上皮内癌,微小浸潤癌)についてFIZによりMMP-2の局在活性発現の検討を行った。MMP-2活性は病変部で一様に見られる様式(HOP : homogenous pattern)と不均一に見られる様式(HEP : heterogenous pattern)に分けられた.すでに異形成の段階でMMP-2活性が見られたが発現様式はHEPのみ,上皮内癌ではHEPとHOP、浸潤癌になるとHOPのみを示していた.これより癌の初期浸潤にはMMP-2活性の発現の有無だけでなく発現様式が重要であることが示された。 3.非浸潤肺腺癌と初期浸潤肺腺癌についてmacro arrayを用い非浸潤腺癌と初期浸潤腺癌での遺伝子発現の相違についてMMP関連遺伝子を含めて検討を開始した.
|