研究概要 |
平成13,14年度の研究により肺腺癌の初期浸潤にはmatrix metaloproteinase-2(MMP-2)の活性化が重要な因子の1つであり、MMP-2活性化量と癌病巣内での線維芽細胞出現との間に関連のあることを明らかにし研究成果を論文として発表した(Cancer Sci 2004;95 & Pathol Int 2004:54).本年度はまず非浸潤肺腺癌手術2症例についてcDNA filter array(MMP関連遺伝子を含む550種類の癌関連遺伝子がプロットされている)を行ったところ癌部は非癌部に比較してMUC1,RhoGDI-beta, alpha-Hexosaminidase, MIP3-betaが高発現していることを明らかとした.さらにsupression subtractive hybridization(SSH)法を用いて肺腺癌における初期浸潤部で特異的に発現しているMMP関連遺伝子の網羅的な解析を行った.3症例の初期浸潤肺腺癌の癌部と非癌部のそれぞれから抽出したmRNAでSSH法を行い癌部で特異的に発現している遺伝子を19個クローニングした.さらクローニングした遺伝子について別の初期浸潤肺腺癌4症例で検討したところ7遺伝子(ATP2C1,SSR2,CALM2,RAC1,MRVI1,KIAA0638,EST)が癌部で高発現しており,これらの遺伝子が初期浸潤に関与していることを明らかにした.さらに初期浸潤肺腺癌の症例でLaser captured microdissection法を用いて浸潤部と非浸潤部のそれぞれの癌細胞のmRNAを採取し,浸潤部と非浸潤部の癌細胞間でSSHを行った.55個の遺伝子がクローニングされ,この中に蛋白質分解酵素の1つである遺伝子(GenBank : D21801)があり,肺腺癌の初期浸潤にこの蛋白質分解酵素が関与していることを明らかにした.
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