研究概要 |
CD44は癌のプログレッションに伴って発現する分子であることが多くの臨床研究から示されている。今回の研究はCD44バリアントの中でもV8-10エクソンを分子内に持つCD44Eを中心に免疫不全マウスに移植した腫瘍について血管増生能について検討した。作製使用した遺伝子導入細胞はCD44s, CD44E, CD44v1-10,CD44v7-10,ベクタープラスミッドのみの導入細胞である。これらの遺伝子導入細胞においてCD44E遺伝子導入細胞は8週間にわたる移植腫瘍観察において有意に腫瘍の壊死像が少なく、顕微鏡的に腫瘍間質に於ける細血管増生が顕著であった。この原因を検討するとCD44E細胞には血管増生因子(VEGF)産性能が転写レベル、タンパク質レベルが亢進しており、この亢進はCD44E遺伝子導入細胞に特異的で、他の4種のCD44E遺伝子導入細胞クローンで共通していた。VEGF発現亢進はCD44の刺激抗体によりさらに高まり、一方、細胞膜ヒアルロン酸の消化によって発現の現象が認められた。ヒアルロン酸はCD44のリガンドである。これらの結果はCD44Eを発現する癌細胞は壊死に陥りにくく、腫瘍増生に大きな意義を持ち腫瘍のプログレッションに結びつく形質と考えられた。
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