研究概要 |
鋸歯状腺腫(SA)と通常の管状腺腫(TA)のAPC、E-cadherin異常、MSI(microsatellite instability)、hMLH1のmethylation、細胞粘液形質を比較した。 1.APC異常: exon1-7のmutationとpromoter領域のmethylationは、SA[(0/26,0%),5/26(19.2%)]とTA[(4/10,40%),9/10,90%]]で、mutation、methylationともにSAがTAに比べ有意に低かった(p<0.005)。 2.E-cadherin異常: exon6-9のmutationとpromoter領域のmethylationは、SA[(2/26,7.7%),(17/26,50%)]、TA[(0/10,0%),(5/10,50%)]であり、両者ともSA、TA間で有意差はなかったが、SAに見られたmutationは、胃型形質を持つ分化型胃癌と同様に、codon418-423の18-base pairの欠失であった。 3.MSI : MSI-H(high)の頻度を検討した。SA、TAともにMSI-Hを示すものはなかった(0/26vs.0/10)。 4.hMLH1: SAでは、ミスマッチ修復遺伝子hMLH1promoter領域のmethylationが30/34(88%)に認められた。 5.細胞粘液形質:胃腺窩上皮型粘液core proteinであるMUC5ACと胃幽門腺型粘液core proteinであるMUC6の発現を、SA、TAで比較した。それぞれのup-regulationの頻度は、MUC5ACがSA(3/31,9.7%)、TA(0/21、0%)、MUC6がSA(22/31,71%)、TA(3/21,14.3%)であった。SA、TA間でMUC6のup regulation頻度には有意差があった(P<0.0001)。 6.まとめ SAの発生には、APC、E-cadherin異常ともに重要な役割は果たしていないと考えられた。また、SAではMSI-Hも認めれなかったが、hMLH1promoter領域のmethylationは高頻度であり、MSI-L tumorの可能性は残され、今後の検討課題である。hMLH1異常はSAの胃型形質と関連していることが想定される。
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