研究概要 |
我々は既にアンドロゲンレセプター消失型前立腺がんでは、メチル化、アセチル化が重要な役割を果たしていることを発表している。同様に、我々は、同じ核内レセプターのretinoic acid receptor(RAR)-α,β,γの発現および、プロモーター領域のメチル化を同様に解析した。この中で、RAR-β2の発現は、LNCaP、PC-3、DU-145で消失していたが、LNCaPおよびPC-3にRAR-β2のプロモーター領域にメチル化を認めた。また、臨床例では、病期A-Cがんの79%に、病期Dがんの90%に同遺伝子のメチル化および発現低下を認めた。ChIP assayにより、RAR-β2発現消失細胞株での、ヒストンH3,H4の低アセチル化が確認された。さらに細胞株で、5-aza-2'-deoxycytidine(azaC)、Trichostatin A(TSA)及びall-trans retinoic acid(ATRA)を用いて、発現とメチル化、ヒストンアセチル化との関係を調べた。3剤の併用で、LNCaP、PC-3で脱メチル化、ヒストンアセチル化に伴うRAR-β2再発現を確認した。DU-145では、TSAとATRA処理により、ヒストンアセチル化に伴うRAR-β2の再発現を認めた。これらの結果は前立腺がんで、メチル化、ヒストンアセチル化というクロマチン構造の変化によるエビジェネチックな機構がRARβ2遺伝子発現制御に関与することを示し、またDNAメチル化に依存する機構(LNCaP、PC-3)と依存しない機構(DU-145)が存在することを示した。以上、前立腺がんにおいて、メチル化、ヒストンアセチル化というクロマチン構造の変化によるエビジェネチックな機構が遺伝子の発現制御に関与することを示した。
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