腫瘍細胞がどのように進展するのかを解明するために、不可逆的かつ蓄積性に変化するゲノムレベルの変化を手がかりに、腫瘍内の多様な成分の間の系譜を明らかにしようとした。CGHはbreakpointの解析ができることから、この目的でのゲノム解析の手段として適しているが、様々な方法論上の問題点があった。初年度でそれらの問題点を踏まえた新たなプロトコールを確立し、次年度にはそれを未分化型胃癌に応用した。 染色体DNAの1コピーの増減と2コピーの増減を識別するために、近4倍体のKATO-III細胞に正常細胞を種々の割合で混合し、nick translation標識によるCGHを行い、混合比に応じたG/R比の変化を検討した。その結果、DOP-PCRによる増幅の有無がG/R比のprofileや正常細胞の混合によるG/R比の変化に影響することはほとんどなかった。また、DNA-tetraploidの腫瘍では、正常細胞の混入が20%未満の条件で1コピーのgainが捉えられたが、1コピーlossを捉えることは困難であった。DOP-PCR標識はCGHに用いるとfalse positiveが出現するためCGHには適しないことが分かった。 一方、未分化型胃癌23例にレーザ・マイクロダイセクションを用いて個々の腫瘍内の多数箇所からサンプリングを行い、抽出したDNAをDOP-PCRで増幅後、CGHに用いて染色体(部分)のコピー数変化を調べた。個々の腫瘍内の検索したすべてのサンプルに見られた変化をstemline変化と定義し、それらに更にsideline変化が付加していったプロセスを、多数のサンプルの結果から症例ごとに再構築した。また、早期癌に見られて進行癌に少ない変化(4q+)、逆に進行癌に多く早期癌に少ない変化(7p+、15q+、3p-など)を明らかにした。
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