研究概要 |
RAGEは胃癌・大腸癌において高頻度に発現しており、前立腺癌においても抗アンドロゲン療法後の転移の獲得に関与する可能性が見られた。RAGE及びそのリガンドであるHMG1でエピジェネティック変化を検討すると、各々にプロモーターメチル化及びヒストンアセチル化が見られた。 RAGEはヒト胃・大腸では正常粘膜には発現が認められず、進行癌において発現頻度が増加する。胃癌細胞株では8株中MKN45のみに発現がなく、TSAまたはAzaC処理にて発現が誘導された。プロモーターSp1サイトを標的としてメチル化特異的PCRを施行するとCpGメチル化が認められた。 また、HMG1は、本来クロマチンタンパクとして核内に存在しており、その分泌機構は不明であった。培養細胞のTSA処理により、ヒストンアセチル化によりHMG1は核内から細胞質内に移動することが認められた。このようにエピジェネティック変化により細胞内蛋白局在が変化することが示された。 癌におけるエピジェネティック変化は極めて多様でありその詳細において一定の方向性を見いだしにくい。そこで、次に、癌よりも多様性が少ないと予想される非癌部粘頂における癌関連遺伝子の発現変化とエピジェネティック変化をヌードマウス大腸癌周囲粘膜過形成モデルを用いて検討した。粘膜上皮細胞の核ヒストンは低アセチル化状態にあり、P53,VHLの発現は抑制されていた。この両癌抑制遺伝子産物はHIF-1αのユビキチン分解に関与しているが、両因子の発現抑制の結果HIF-1αのタンパクレベルは増加しており、VEGF発現亢進の原因のひとつと考えられた。また、大腸癌周囲過形成性粘膜では、プロモーターメチル化によるp16,MLH1,MGMT発現低下が認められた。このような、ヒストン低アセチル化・プロモーターメチル化の原因として大腸癌細胞が産生する増殖因子が重視された。
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