研究概要 |
現在,甲状腺の乳頭癌には種々の亜型が報告されているが,各々が独立した疾患概念として認められるべきか否かは未だ十分に解析されているとは言い難い。甲状腺乳頭癌が家族性大腸ポリポーシスに合併することは古くから知られているが,近年その組織像や免疫組織化学的染色結果の特徴が次第に明らかになりつつある。家族性ポリポーシスに合併する甲状腺乳頭癌は,圧倒的に女性に多く,組織学的に篩状構造,morule形成,ビオチン含有淡明核などが特徴的である。免疫組織化学的にも,βカテニンが核にも陽性を示すことが特異的であり,さらに,estrogen receptorやprogesterone receptorも陽性である。この亜型はcribriform-morular variantと呼ばれており,ポリープが出現する前に甲状腺腫瘍が発見される場合もある。しかし,この組織型はポリポーシスを有さない症例でも出現することがあり,この亜型がAPC遺伝子の胚細胞変異を有しているのか、あるいは体細胞変異を有しているのかはその発生に関して非常に興味深い。我々は,現在cribriform-morular variantの症例を集めている最中であり,来年度にはそれらの腫瘍を対象に,免疫組織化学的検索,ならびにAPC遺伝子や甲状腺乳頭癌でしばしば陽性となるret/ptc遺伝子の検索を行なうつもりである。
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