研究概要 |
<目的> CD5陽性びまん性大細胞型リンパ腫(CD5^+ DLBCL)の組織発生を明らかにするために本年はCD5^+ DLBCLとCD5^-DLBCLについて免疫グロブリン遺伝子可変領域(VH遺伝子)のほか、bcl-6遺伝子promoter領域のsomatic mutation、bc1-6遺伝子異常、DNA microarray法を用いた比較検討を行った。 <結果> 1)bcl-6遺伝子promoter領域のsomatic mutation 腫瘍組織から高分子DNAを抽出し、bcl-6遺伝子promoter領域(およそ700bps)をPCR増幅し、塩基配列を解析した。CD5^+ DLBCLは11症例を検討した。6例はgermlineを示し、5例は1塩基のみmutationしていた。VH遺伝子somatic mutationとの関係は(1)Low frequency群は2例で1例にmutation(+)、(2)hypermutation群は6例中3例にmutation(+)、(3)他3例(VH遺伝子未解析)は1例にmutation(+)であった。一方、CD5^-DLBCLは8例について解析したところ、3例はgermline、4例でmutationを示したが、mutationを示した塩基数はそれぞれ1,3,4,5塩基であった。他1例では1塩基の欠損(deletion)を認めた。このうち5例でVH遺伝子のsomatic mutationを解析しているが、5.6-19.1%のmutation頻度を示した。 2)bcl-6遺伝子異常(再構成もしくは染色体異常) Southern blottingによるbcl-6遺伝子の再構成、もしくは染色体分析による3q27異常を検索したが、CD5^+ DLBCL20例に異常は認められなかった。CD5^-DLBCLではおよそ20%にbcl-6遺伝子の異常を認めるとされる。 3)DNA microarray 腫瘍組織からRNAを抽出し、CD5^+ DLBCL 6例とCD5^-DLBCL 6例についておよそ600の遺伝子についてmicroarray法による発現を検討したところ、CD5^+ DLBCL 4例は、CD5^-DLBCLの他2例とCD5^-DLBCL 6例を合わせた群とは明らかに異なる発現パターンを示した。 <これまでの結果からの考察> CD5^-DLBCLに比較してCD5^+ DLBCLはVH遺伝子の他、bcl-6遺伝子の変化および異常が少ないことが明らかにされた。さらにDNA microarrayにより遺伝子発現のパターンが異なることも示された。すなわちCD5^+ DLBCLとCD5^<+-> DLBCLでは遺伝子レベルで異なった腫瘍であることが示唆された。
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