研究概要 |
節外性リンパ腫の多くを占めるMucosa-Associated Lymphoid Tissue(MALT)リンパ腫に特異的なAPI2-MALT1キメラ遺伝子が1999年に報告された.この遺伝子異常によりAPI2の持つ抗アポトーシス作用が増強され細胞の不死化が起こり,MALTリンパ腫を発生させるという機序が考えられている.しかしAPI2-MALT1キメラ遺伝子とアポトーシス関連因子との関連,臓器別MALTリンパ腫における頻度・臨床因子・予後との関係など多くは不明である.申請者はパラフィン材料を用いたmultiplex RT-PCRを用いてこの遺伝子異常を検出する方法を開発し,その臨床病理学的応用を可能にした.平成13年度は肺および皮膚MALTリンパ腫においてこの異常遺伝子が持つ臨床病理学的意義について検索した.それぞれ51例および27例が収集され,現在症例の解析中である.同時に胸腺MALTリンパ腫においてAPI2-MALT1キメラ遺伝子の関連を含む臨床病理学的検討を行い報告した.胸腺MALTリンパ腫は希なリンパ腫であるが,香港Queen Elizabeth病院のJ.K.C.Chan博士や国内血液病理学者との共同研究により,以下の特徴を有するリンパ腫であることを明らかにした:アジア人,女性,自己免疫疾患との深い関連,嚢胞形成,形質細胞分化,免疫グロブリンIgAタイプ,およびAPI2-MALT1キメラ遺伝子の欠如.このように胸腺MALTリンパ腫は臨床病理学的にユニークなMALTリンパ腫亜型と考えられた.このリンパ腫が独立した疾患単位であるかはさらなる症例の集積による検討が必要である.
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