研究概要 |
近年、我が国では食生活の欧米化や高齢化に従い高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が急増しており、これに伴って急性心筋梗塞や不安定狭心症、虚血性突然死などの急性冠症候群の患者数が増加してきている。急性冠症候群をとりまくこの様な事情から、背景疾患との関連機序を含めた病態解明が急務となっている。 我々はこれまで、ヒト冠動脈病変の形成・進展におけるアンジオテンシンIIなどの血管収縮物質の作用や酸化LDLをはじめとする酸化ストレス増強の重要性について報告してきている。特に酸化ストレスは、ヒト冠動脈プラークにおける泡沫化マクロファージ集積やTリンパ球活性化などの炎症過程に寄与し、急性冠症候群の原因であるプラーク破綻への関与も示唆されている。これらを踏まえ、酸化ストレス源の探求および生活習慣病との関連の解明へと研究をすすめた。 我々は本年度の研究において、糖尿病を背景疾患にもつ急性冠疾患患者を対象として酸化LDLの冠動脈病変への関連を解析し、酸化LDLが特に糖尿病患者の冠動脈プラーク不安定化に強く関わることを明らかにした(J Diabetes Complications.16:60-64,2002)。また、冠動脈病変部への酸化ストレス源として、強力な酸化酵素であるミエロペルオキシダーゼを有する活性化好中球および単球に着目し、冠動脈の免疫組織化学的な解析の結果、これらの炎症細胞の集積がヒト冠動脈のプラーク不安定化、特にプラーク破綻のメカニズムに重要な役割を担っていることを明らかにした(Circulation 106:2894-2900,2002)。
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